家賃滞納者をうまく退去させるには
家賃を滞納するような借主には早く出て行ってもらいたい。
貸主としては当然の考えですが、とはいえ即時に相手を無理やり退去させることはできません。
法律上、自力救済は認められていませんので、例えば勝手に鍵を変えてしまったり、出ていくように威迫したりすれば、かえって貸主側が損害賠償を請求されることもあるのです。
したがって、相手を退去させるには手続きを踏む必要があります。
まずは任意に交渉をすることが考えられますが、早く退去をさせたいからといって、家賃の一部免除や分割弁済などを安易に許すと、最終的に支払いを得られないということもありますので、十分に注意をして交渉をする必要があります。
強制退去をさせるためには裁判手続きを経る必要がありますので、任意交渉をしながら訴訟の準備をあわせて行うことになります。
裁判手続きを利用し、強制退去をさせるためには、建物明渡請求をする必要があります。
賃借人は賃貸借契約により建物を占有できますので、まず前提として賃貸借契約を解除する必要があります。しかし、日本では、賃借人が厚く保護されていますので、家賃を滞納したというだけでは、信頼関係が破壊されたとまではいえないので、賃貸借契約を解除することはできないと言われてしまうこともあります。
ではどの程度家賃滞納期間が経過すれば賃貸借契約を解除できるかというとこれもケースバイケースであり、2ヶ月の滞納で認められることもあれば、半年でも認められないケースもあります。ただ、概ね裁判例では、3ヶ月以上の滞納であれば、信頼関係が破壊され賃貸借契約を解除することが可能とされたケースが多いでしょう。
裁判で賃貸借契約の解除が認められ、建物の明渡が認められた場合に、相手方がなおなかなか退去しようとしないときには、裁判所の強制執行手続きを利用して、現実に退去をさせる手続きを採ることになります。
相手方との交渉が長引き、結局退去をさせるのに時間がかかるということもありますので、できる限り早めに対応をすることが肝要です。
家賃滞納が始まった段階で弁護士に相談し、滞納家賃の支払いと併せ、必要であれば退去手続きについても依頼されることをお勧めいたします。
いすれにしろ、滞納家賃回収や家賃滞納者の建物退去について、どのような手法を採用すべきか、その場合の実際の手続きの遂行について、これらの諸般の事情を考慮して、検討することが重要です。