貸付金の回収方法|返済されない貸付金を回収する手順を弁護士が解説

貸付金が返済されない場合に最初に確認すること

貸し付けた資金が約定どおりに返済されない場合、まず確認すべきは、債権の内容、相手方の資力、そして時間的な制約の3点です。

債権の内容とは、いつ、いくらを、どのような約定で貸し付けたかという事実関係です。相手方の資力とは、現に回収の引当てとなる財産が存在するかという問題です。時間的な制約とは、消滅時効の完成が迫っていないか、また相手方が財産を処分する動きを見せていないかという問題です。

この3点のうち、実務上最も見落とされやすいのが相手方の資力です。判決を得ることと、現実に金銭を回収することとは別の問題です。相手方に引当てとなる財産がなければ、勝訴しても回収には至りません。当事務所は、回収可能性を起点として方針を組み立てます。

当事務所が取り扱う貸付金の類型

貸付金と申しましても、その性質は一様ではありません。当事務所は、主として次の類型を取り扱っています。

  • 金銭消費貸借契約に基づく事業資金の貸付け
  • 会社から役員に対する貸付金(役員貸付金)
  • 親会社と子会社との間、又は関係会社相互間の貸付金
  • 取引先に対する運転資金の融通
  • 個人間の高額の貸付け(事業性を有するもの)

役員貸付金及び関係会社間貸付金の特殊性

役員貸付金及び関係会社間の貸付金は、貸主と借主とが実質的に近い関係にあるため、契約書が作成されていない場合や、返済期限が定められていない場合が少なくありません。

また、会社の支配権が移転した後に、旧経営陣に対する貸付金の回収が問題となる場面も生じます。当事務所は、M&A及び事業承継を主たる業務としており、支配権の移転に伴って顕在化するこの種の債権について、取引の経緯を踏まえた対応をとることができます。

借用証書がない場合に貸付けの事実をどう立証するか

借用証書又は金銭消費貸借契約書が作成されていない場合であっても、回収を断念する必要はありません。裁判上の立証は、書面が1通あるか否かで決まるものではなく、複数の間接的な事実の積み重ねによって行われます。

実務上、次の資料が立証の手掛かりとなります。

  • 銀行口座の振込記録(送金の事実と金額、時期を示します)
  • 会計帳簿及び総勘定元帳の貸付金勘定の記載
  • 決算書の貸借対照表における貸付金の計上
  • 電子メール、通信アプリの記録、議事録等における返済の約束
  • 一部弁済の事実(債務の承認として扱われます)
  • 利息の授受の記録

送金記録だけでは足りない理由

送金の事実のみでは、その金銭の交付が貸付けであることまでは示されません。贈与であった、出資であった、既存の債務の弁済であったといった反論が想定されます。

そこで、送金記録に加えて、返済の約束を示す資料、又は会計上の処理を示す資料を併せて用意することが重要になります。当事務所は、御相談の段階で、どの資料が有効かを具体的に指摘します。

連帯保証人及び担保からの回収

主債務者からの回収が困難な場合には、連帯保証人に対する請求、及び担保権の実行を検討します。

連帯保証については、保証契約が書面によってされているか、保証意思の確認が適切にされているかが争点となる場合があります。事業のために負担した貸金債務を個人が保証する場合には、原則として公正証書による保証意思の表示が必要とされる場面もあり、契約の締結時期と内容の確認を要します。

担保については、不動産に設定された抵当権、債権に設定された質権、譲渡担保等の実行方法を検討します。担保の目的物の価額と、先順位の担保権の有無により、実際の回収額は大きく変動します。

回収の手順

おおむね次の順序で進めます。事案により、途中の段階を省略し、又は並行して進める場合があります。

  • 第1段階 事実関係の整理と資料の収集。相手方の資力の調査を含みます。
  • 第2段階 内容証明郵便による催告。消滅時効の完成猶予の効果も生じます。
  • 第3段階 任意の交渉。分割弁済の合意と公正証書の作成を含みます。
  • 第4段階 仮差押えの申立て。相手方による財産の処分が懸念される場合に実施します。
  • 第5段階 訴訟の提起又は支払督促の申立て。債務名義を取得します。
  • 第6段階 強制執行。預貯金、売掛金、不動産、動産に対する執行を行います。
  • 第7段階 財産開示手続及び第三者からの情報取得手続。財産の把握が困難な場合に用います。

仮差押えを検討すべき場合

訴訟には相応の期間を要します。その間に相手方が財産を処分してしまえば、判決を得ても回収できません。そこで、本案訴訟に先立ち、財産を仮に差し押さえておく手続が民事保全法に定められています。

仮差押えの申立てには、被保全権利と保全の必要性を疎明する必要があり、また裁判所の定める担保金を供託する必要があります。担保金は、事案により請求債権額の1割から3割程度とされることが多く、相応の資金の準備を要します。

もっとも、預貯金債権を仮に差し押さえた場合には、相手方の事業活動に直ちに影響が生じるため、任意の弁済につながる例も少なくありません。費用と効果を比較した上で、実施の当否を判断します。

消滅時効に注意してください

債権は、権利を行使することができることを知った時から5年間、又は権利を行使することができる時から10年間、行使しないときは、時効によって消滅します。令和2年4月1日より前に生じた債権については、改正前の民法が適用され、期間の定めが異なります。

催告(内容証明郵便による請求)には、6か月間、時効の完成を猶予する効果があります。もっとも、催告を繰り返しても猶予の効果は重ねて生じません。時効の完成が迫っている場合には、訴訟の提起又は仮差押えの申立てを行う必要があります。

相手方が債務を承認した場合には、時効は更新され、そこから新たに進行します。一部の弁済、支払猶予の申入れ、残高の確認等が承認に当たる場合があります。

弁護士に依頼する利点

第1に、弁護士名義の請求書面は、相手方に対して手続の進行を具体的に予告する意味を持ちます。第2に、弁護士会照会その他の方法により、相手方の財産に関する情報を収集できる場合があります。第3に、保全、訴訟、執行の各手続を一貫して担当することにより、手続の切替えの判断が遅れません。

当事務所は、M&A、事業承継及び企業法務を主たる業務としています。株式の評価、会計及び税務の理解を要する事案についても、同一の事務所内で検討することができます。

御相談の申込み

貸付金の回収については、電話又はお問い合わせフォームより承ります。電話の受付は午前9時から午後9時まで、お問い合わせフォームは24時間受け付けています。御来所を基本としていますが、オンラインによる相談にも対応しています。

御相談の際は、金銭消費貸借契約書、借用証書、送金記録、会計帳簿、相手方との通信記録等をお持ちください。これらがお手元にない場合であっても、口頭での御説明のみで差し支えありません。

お問い合わせ

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    ABOUT US
    弁護士土屋勝裕
    弁護士法人M&A総合法律事務所の代表弁護士。長島・大野・常松法律事務所、ペンシルバニア大学ウォートン校留学、上海市大成律師事務所執務などを経て事務所設立。400件程度のM&Aに関与。米国トランプ大統領の娘イヴァンカさんと同級生。現在、M&A業務・M&A法務・M&A裁判・事業承継トラブル・少数株主トラブル・株主間会社紛争・取締役強制退任・役員退職慰労金トラブル・事業再生・企業再建に主として対応
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