民事訴訟とは?手続きの流れや期間、費用相場から対応のポイントまで解説

民事訴訟の定義や手続きの流れなど、民事訴訟の概要をわかりやすく解説いたします。

また、民事訴訟にかかる平均期間や費用相場もおさえつつ、万が一、民事訴訟の当事者となってしまった場合の対応ポイントもご参考にしてください。
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民事訴訟とは?

民事訴訟とは、人や法人といった私人間において紛争が発生した場合に、国家が介入し解決する制度のことをいいます。

私人間における法律関係は、その当事者間で自由に決定することができ、これを私的自治の原則といいます。

民事訴訟が扱う対象は、この私的自治の原則が妥当する領域であることから、紛争の解決においてもできるだけ当事者の意思を尊重すべきであると考えられています。

民事訴訟と刑事訴訟の違い

1.目的

民事訴訟と刑事訴訟の大きな違いとしては、その目的にあります。民事訴訟が、人や法人といった私人間のトラブルに裁判所が介入し「紛争を解決すること」を目的としている一方で、刑事訴訟は、「刑罰法令に違反した犯罪者に対して刑罰を与えるか否かを判定すること」を目的としています。

2.当事者

民事訴訟の当事者は私人対私人であり、訴える側を「原告」、訴えられる側を「被告」と呼びます。

刑事訴訟の「原告」は私人ではなく国家であり、その代表機関である検察官が訴訟当事者となります。また、訴えられる側は「被告人」と呼びます。

3.解決方法

冒頭で記載したとおり、民事訴訟の対象は私的自治の原則が妥当する領域であるため、自主的な解決、つまり和解や調停、仲裁などによることも可能です。和解などによる解決に至らない場合は裁判所の判決によります。判決などの結果に被告が従わない場合は、民事執行手続が行われることになります。

一方で刑事訴訟では、有罪であるか無罪であるかの判断や、刑罰の種類、程度などの量刑も併せて行います。なお、刑罰の執行は判決が確定した後に行われます。</p>

民事訴訟の種類

民事訴訟の種類は、大きく以下の4つに分類することができます。

1.通常訴訟

主に、財産権(物権、債権など)に関する紛争を解決する訴訟です。

(例)貸金の返還請求、不動産の明渡請求、人身損害に対する損害賠償請求

2.手形小切手訴訟

手形・小切手による金銭などの支払請求のための簡易迅速な略式訴訟です。

手形・小切手といった有価証券を保有している人は、債権があると推定されることが多く、スピーディーに判決を与えることが可能です。

3.少額訴訟

訴額60万円以下の金銭支払請求のための簡易迅速な略式訴訟です。

訴えの提起は必ず簡易裁判所に対して行います。通常訴訟と比較して制限もありますが、手続が簡易であり、申立て費用も安いです。

4.その他の訴訟

家族関係についての紛争に関する訴訟としての人事訴訟や、行政庁の行為の取消しを求める行政訴訟などがあります。

民事訴訟と民事調停の違い

記の紛争は裁判所の判決による解決も可能ですが、場合によっては民事訴訟の判決ではなく民事調停(家族関係については家事調停)により解決するほうが望ましいこともあります。

民事調停とは、調停委員会が当事者の間に入って両者の言い分を調整し、当事者がその主張を互いに譲歩して紛争解決の合意をすることをいいます。

調停案を調書に記載すると調停が成立し、確定判決と同一の効力が生じます。

民事訴訟との大きな違いは、判決ではなく当事者の合意により解決が図られるという点であり、当事者間での話し合いが見込める事案においては調停の方が解決が早いこともあります。

また、法律に縛られず、実情に合った円満な解決を図ることもできます。
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民事訴訟の手続きと流れ

ここからは、民事訴訟の手続きと流れについて解説していきます。

原告が訴状を裁判所に提出

訴訟手続は、原告が裁判所に対して訴状を裁判所に提出し、その審判を求めることから開始します。これを訴えの提起といいます。

訴状には①当事者および法定代理人、②請求の趣旨、③請求の原因を記載する必要があります。ここに記載する事項と判決書の記載事項は対応しているため、適切な記載が求められます。もし、訴状の記載内容に不備がある場合は、補正を命じられます。

訴状の提出先は、その事件について管轄権を有する裁判所です。管轄権の所在は、請求の種類や内容などによって異なります。

なお、簡易裁判所では、口頭による提起も認められています。

裁判所の訴状受付、被告への訴状の送付

裁判長が、原告の訴状を点検したうえで適法なものとして受理すると、被告に訴状の副本を送達します。

口頭弁論期日の指定・呼び出し

裁判長は、訴状の送達とともに、第1回口頭弁論期日を指定し、当事者双方に期日(当事者が一定の場所に集合して、訴訟行為をするために定められた日時)の呼出状を送達します。

答弁書の提出・送付・受領

被告は、第1回口頭弁論の期日までに、訴状に記載された事実関係の認否や、事実・法律問題に関する主張を述べた答弁書を裁判所に提出します。

答弁書は、裁判所で受理されたのち、原告の元に届けられます。答弁書が届いたら、その内容に基づき、争点の整理、準備書面の作成など、口頭弁論の準備を行います。

口頭弁論

口頭弁論とは、期日において裁判所の面前で、当事者双方が口頭でかつ直接本案の申立ておよび攻撃防御方法(訴訟資料)の提出を行うことをいいます。

要するに、裁判所の面前で原告と被告が「弁論」や「証拠調べ」をする審理のことをいいます。

判決手続を行うためには原則として口頭弁論が必要です。

口頭弁論の基本原則としては、主に以下の4つが挙げられます。

1.公開主義

一般国民が傍聴しうる状態で行うこと。

2.双方審尋主義

当事者双方にそれぞれ攻撃防御方法を提出する機会を平等に保障すること。

3.口頭主義

弁論および証拠調べを口頭で行い、口頭での陳述のみを判決の基礎にすること。

※ 実際には口頭主義の補完のため、書面が必要な部分も多くあります。

4.直接主義

判決を出す裁判官が当事者の弁論の聴取や証拠調べを行うこと。

また、攻撃防御方法(訴訟資料)の提出には適時提出主義が採用されています。

これは、訴訟の進行状況に応じて適切な時期に攻撃防御方法を提出しなければならないとする建前のことをいい、時機に後れた提出が訴訟の完結を遅延させるときは、裁判所はこれを却下することができます。

証拠調べ

当事者の主張により争点が明確になると、証拠調べを行います。審理の充実と促進を図るため、争点と証拠を出し尽くしたうえで、証拠調べはできる限り、期日の終盤に集中して行う必要があります。

証拠調べの手続きは、以下の流れで進行します。

1.証拠の申出

当事者が裁判所に対し、特定の証拠の取調べを要求する申立てをする。

2.証拠の採否

適式な証拠の申出がなされた場合、裁判所の判断によってこれを採用し取り調べるか否かを決定します。

3.証拠の取調べ

採用された証拠の取調べは職権進行主義のもと、裁判長が指揮権を持って裁判所が主宰して行います。もっとも、当事者には証拠調べに立会う権利が認められており、自ら証拠調べを行い証拠に関する主張を行うことが可能です。

証拠の具体的な内容については後に記述します。

和解の検討

民事訴訟の終了は判決のみによるわけではありません。

当事者は、訴訟係属中、いつでも和解することができます。

訴訟上の和解とは、当事者が主張を互いに譲歩して訴訟を終了させる旨の合意をすることをいい、口頭弁論などの期日においてなされます。

和解の陳述があると、裁判所は職権で要件を調査し、具備していれば書記官に調書に記載させます。

和解調書には、確定判決と同じ効力が生じます。和解のメリットとしては、紛争を早期に解決できることや、一定の成果を確保して敗訴リスクを回避できること、費用の節減などが挙げられます。

判決

裁判所は、判決をするに十分審理が尽くされたと判断した場合、口頭弁論を終結し、判決の言渡しの手続きに入ります。

裁判所は、判決内容が確定すると判決書を作成します。

判決書には、①主文、②事実、③理由、④口頭弁論の終結の日、⑤当事者および代理人、⑥裁判所が記載されます。

判決の言渡しは、原則として口頭弁論の終結から2か月以内になされます。その期間の長さは、事件の複雑さなどによって異なります。

判決の言渡しは当事者が在廷しなくてもすることが可能であり、実務では期日には出席せず、電話で裁判所に問い合わせて判決内容を確認するのが一般的です。

判決は、この言渡しによって効力を生じます。

判決の言渡しがあると、裁判長は書記官に判決原本を送達し、書記官は判決正本を当事者に送達します。

上訴

判決の内容に不服がある場合は、裁判の確定前に上級裁判所に対して不服申立てをすることができます。この不服申立てのことを上訴といいます。

通常、判決は判決書の送達を受けてから2週間を経過するとその期間満了時点で確定するため、その前に申立てを行う必要があります。

上訴の目的は、適正な裁判を確保して当事者の権利保護を図ることや、法令解釈の統一を実現することに求められます。

上訴には以下の2つが挙げられます。

1.控訴

控訴とは、第1審の終局判決に対する第二の事実審への上訴の申立てをいいます。

第1審が地方裁判所で行われた場合は、高等裁判所に控訴します。

控訴状は、第1審の裁判所に提出します。控訴審では、第1審で収集された訴訟資料に、控訴審で新たに収集される訴訟資料を加えて、不服申立てについての当否を判断します。これを続審主義といい、第1審で提出しなかった攻撃防御方法を提出することができます。

2.上告

上告とは、控訴審の終局判決に対する第3審への上訴の申立てをいいます。

第2審が高等裁判所で行われた場合は、最高裁判所に上告します。

上告期間は控訴と同様2週間以内であり、控訴審の裁判所に対して上告状を提出します。

控訴審までとの大きな違いとしては、控訴審までが事実審であるのに対し、上告審は法律審であることです。事実審では事実認定および法律解釈を扱うのに対し、法律審では事実認定は行わず法律解釈のみを扱います。

判決後の流れ

判決が確定し勝訴判決を得た場合は、強制執行が可能となります。

強制執行を行うためには、勝訴判決のほかに、裁判所から執行文の付与を受ける必要があります。

これは、いわゆる執行可能であることのお墨付きを裁判所からもらうことであり、執行に必要な書類が揃うと裁判所に対し強制執行の申立てが可能となります。

民事訴訟にかかる平均期間

裁判所ホームページの統計情報によると、令和2年の地方裁判所第一審の訴訟審理期間の平均は9.9か月、うち、対席判決で終局した事件の場合は13.9か月となっています。

平成22年頃から平成27年まで長期化が続き、平成28年、29年はおおむね横ばいに推移しましたが、近年は再び長期化しています。

また、審理期間が2年を超える事件数も増加傾向にあります。

もちろん、裁判の内容により平均期間は異なり、特に医療関係、建築瑕疵損害賠償の訴訟はどちらも26か月を超える長期間となっています。

期間の短縮化のための重要事項として、準備書面の提出期間を柔軟に設定することや、裁判官と当事者の間の認識共有を強化することなどが挙げられています。

参考:裁判所データブック2021

民事訴訟の判決ポイント【自由心証主義について】

裁判官は、裁判において明らかとなる具体的事実を認定し、それに法規を解釈・適用して「自由心証主義」に基づき事実認定を行います。

自由心証主義とは、裁判における事実の認定を、裁判官の自由な評価にゆだねる建前をいいます。

これはつまり、裁判官は「証拠調べの結果」と「口頭弁論の全趣旨」を斟酌し、「自由な心証」により事実認定を行うことができることを意味しています。

事実認定のために取り調べる証拠方法は制限されておらず、例えば伝聞証拠を含めて斟酌することができます。また、口頭弁論の際に現れた証拠資料以外の一切の資料(弁論の内容、釈明処分により得られた資料、当事者または代理人の陳述の態度など)も斟酌することができます。

さらに、当事者の主張・提出した証拠はいずれも他方当事者に有利な事実認定にも用いることができます。

加えて、証拠調べの申出を撤回できるかどうかも自由心証主義と関わってきます。

証拠調べ終了前であれば相手方の同意があれば撤回は可能ですが、終了後においては裁判所の心証が形成されており、撤回は裁判所の自由な心証形成を害するため、相手方の同意があっても申出を撤回することは許されません。

要するに、裁判を有利に進めていくうえにおいては、裁判所の自由心証主義を意識しながら、いつ、どの証拠を提出するかどうかということを意識する必要があるといえます。</p>

民事訴訟に必要な証拠と種類

民事訴訟において重要となる証拠とその種類について解説いたします。

証拠とは?

上記からも分かる通りですが、証拠とは、裁判所による事実認定のための資料をいいます。証拠の意味には次の3つの用法があります。

1.証拠方法

有形的な証拠そのもの。

(例)証人、当事者本人、鑑定人、文書、検証物

2.証拠資料

証拠方法を調べて得られた内容。

(例)証言、当事者の供述、鑑定意見、文書の内容、検証結果

3.証拠原因

裁判官の心証形成の原因となった資料。

(例)証拠調べの結果、弁論の全趣旨

また、証拠は大きく、物証と人証の2種類に分かれます。

物証

物証とは、物を対象とする証拠をいいます。

(例)文書、検証物

人証

人証とは、人を対象とする証拠をいいます。

(例)証人、鑑定人、当事者本人

民事訴訟の費用と相場

民事訴訟の当事者となった場合、気になるのは費用とその相場だと思われます。費用の内訳をおさえつつ、解説いたします。

訴訟費用の種類

民事訴訟にかかる費用としては、訴訟費用と弁護士費用とがあります。ここでは、訴訟費用について紹介したいと思います。

まず、訴訟費用とは、訴訟手続を行ううえで支出された費用であって法律で定められた範囲のものをいいます。

民事訴訟における訴訟費用は、最終的には敗訴者が負担するのが原則ですが、一時的には申立人が立替払することになり、判決の確定後、本来支払うべき者が支払うことになります。

なお、原告側にも望ましくない行為があったなどの事由があれば、訴訟費用は分割して負担するといった判決になる可能性もあります。

また、訴訟が和解により終了した場合には、訴訟費用は通常各自負担となります。

訴訟費用は、裁判所に納める訴訟費用と、証人などに対する給付に区分されます。

裁判所に納める訴訟費用としては、訴えの提起の手数料や、書類の送付・送達費用のほか、期日への出頭日当、出頭旅費、宿泊料などが挙げられます。

証人に対する給付としては、旅費、日当、宿泊料などが挙げられます。

訴訟費用の相場

訴訟費用は、「民事訴訟費用等に関する法律」及び「民事訴訟費用等に関する規則」に定められています。例えば、訴えの提起の手数料は訴額に応じて手数料が異なります。裁判所ホームページには手数料額早見表も掲載されており、訴額が100万円の場合だと手数料額は1万円となります。

訴訟費用の相場は訴訟の訴額やかかる期間によって異なってくることになりますが、弁護士費用を含めた費用は最低でも20万円はかかると考えてよいと思われます。

民事訴訟に関する重要ポイント

ここで、民事訴訟に関して注意していただきたい重要ポイントを解説いたします。

訴状が届いたときの対応

訴状が届く、つまり民事訴訟を起こされた当事者になってしまった場合にどうすればよいでしょうか。身に覚えのないものであるからといって無視して欠席裁判が行われてしまった場合、原告の主張通りの判決が下される可能性があります。訴状を受け取ったら必ず答弁書を作成・提出することが重要です。

口頭弁論の指定期日に参加できない場合は?

定された口頭弁論の期日に出廷できないからといって欠席してしまうと、これまた不利な判決が下されかねません。

呼出状に記載されている担当の裁判所書記官に連絡し、事情を伝えて期日の変更を願い出ましょう。

弁護士に依頼するメリット

上記のとおり、民事訴訟の当事者となってしまった場合には無視するのではなくきちんと対応することが重要なポイントとなります。

しかし、どのような対応をすべきかの判断を行うことは非常に困難です。

また、裁判を有利に進めるためには法的な主張内容を理解する必要がありますし、複雑な手続や書面作成などもあり、日常生活や業務に大きな負担となってきます。

よって、費用を負担してでも法律のプロである弁護士に依頼することがご自身の身を守ることにつながります。
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まとめ

ここまで、民事訴訟の手続や期間、費用相場の概要についてご紹介してきました。

民事訴訟は手続法ゆえに手続が厳格かつ緻密です。民事訴訟の当事者となる場合には、あらかじめその内容を入念に確認し理解したうえで臨みましょう。

参考:裁判所データブック2021: https://www.courts.go.jp/toukei_siryou/databook/index.html

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    弁護士土屋勝裕
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