⇒債権回収を強力に進めるなら!
銀行預金差押さえとは?
まずは、銀行預金差押えがどのようなものなのか、その概要を確認していきましょう。銀行預金差押えは取引先(債務者)が商品や家賃などの支払いをしない場合に、取引先の銀行口座から預金を強制的に債権者に入金させる手続きのことです。銀行預金差押えをするには、裁判において勝訴の判決をもらっている必要があり、判決が出ているにも関わらず、支払いが行われない時に実施することができます。
「お金を支払わない取引先はお金を持っていないのでは?」と思う人もいるかもしれませんが、必ずしも全ての取引先がそのようなケースであるとは限りません。中には、お金はあるものの、他の取引先への支払いや従業員への給料を優先していて、支払わないというケースもあります。銀行預金差押えはこのようなケースで力を発揮してくれます。もしうまく差押えができれば、債権回収の大きな助けとなるでしょう。
銀行預金差押えの流れ
ここからは、銀行預金差押えの具体的な流れについて解説します。大まかな流れは以下の通りです。
・債権差押えの申し立てをする
・差押命令
・陳述書の返送
・債権の差押え
・取立完了届を裁判所に提出
それぞれについて確認していきましょう。
債権差押えの申し立てをする
銀行預金差押えをするにはまず、差押えの申し立てをしなければいけません。申し立ては、裁判所に「債権差押命令申立書」という書類を提出することで行えます。また、以下の書類も必要となるので用意しておきましょう。
・判決正本
・執行文
・判決送達証明書
・資格証明書
・申立手数料
・郵便切手
判決正本とは、勝訴の判決をとったものの正本です。コピーは負荷なので注意してください。また、執行文には、差押えを行える旨が記載されており、裁判所に申請すれば受け取ることができます。判決送達証明書は、判決文が取引先(債務者)に送られたことの証明が記載されています。こちらも裁判所に申請すれば入手できます。資格証明書とは、債権者、債務者、第三債務者が法人である時に必要となるもので、法人登記簿謄本などが該当します。
そして、申し立てには手数料が必要になります。基本的に債権者1人に対して債務者が1人であれば、4,000円の収入印紙が必要です。また、裁判所が書類を送る際の郵便切手代も3,000円ほど必要になるので用意しておきましょう。
差押命令
申し立てが通ると、差押命令正本と呼ばれるものが債務者と債務者の口座を管理する金融機関に送られます。また、差押えをする側の債権者には送達通知書と呼ばれる書類が送られてきます。
ここでの重要ポイントは、差押命令がくだされた時点での口座残高が差押えの対象金額になるということです。この後に入金がされる可能性もありますが、あくまでも差押えができるのは、差押命令時点の金額です。
陳述書の返送
差押命令が送られてきた金融機関は、陳述書を提出します。この陳述書には、差押ができる金額が記入されています。
債権の差押え
いくら差押えができるのかがわかったら、金融機関は債権者から請求された額の債権を差押え、債務者の口座から別の口座へと移します。
裁判所に取立完了届の提出
債権者は実際に金融機関からの弁済を受けたら取り立て完了となるので、裁判所に「取立完了届」を提出します。
以上が大まかな銀行預金差押えの流れです。先ほども説明していますが、例え裁判で勝訴の判決が出ていても、差押えは規定に則って行わなければいけません。個人で勝手に債務者の元を訪れて財産を差押えるといったことはできないので注意してください。もし勝手に財産を差押えたり取ったりすると、逆に罪に問われる可能性があります。
⇒債権回収を強力に進めるなら!
銀行預金差し押さえを行う際のポイント
銀行預金差押えの成功率を少しでもアップさせるためには、いくつかのポイントをおさえておく必要があります。ポイントは以下の通りです。
・口座に関する調査を行う
・差し押さえのタイミングを考慮する
・差押えをしたらすぐに取り立てを行う
・仮差押えを活用する
それぞれについて確認していきましょう。
口座に関する調査を行う
銀行預金差押えを行うには、債務者がお金を預けている金融機関の名前と支店名を把握しておかなければいけません。ちなみに、預金口座の番号は分かっていなくても問題ありません。
これが分かっていればいいのですが、債務者がどの金融機関のどの支店で口座を所有しているかを把握しているケースは決して多くないでしょう。そのため、金融機関と口座に関する調査を行う必要があるのです。調査方法にはいくつかの種類があります。
過去の取引情報から調べる
債務者と過去に取引がある場合に有効な調査方法です。例えば債務者から物を買った、借りていたお金を支払ったといった場合、支払先の金融機関と口座はわかるはずです。
債権回収交渉をするときに取引先の決算書をあずかっておく
取引先から支払いが遅れる旨の連絡があったときなどには、決算書をあずかるようにしましょう。決算書には、お金をあずけている金融機関や支店名、残高などが記載されているためです。取引先は支払いを遅らせてほしいわけですから、応じてくれる可能性は十分にあるでしょう。
第三者に照会をかける
取引先の口座情報を第三者が把握している場合は、その人に確認してみるのも一つの方法です。例えば、取引先が携帯電話を法人契約していて、利用料金の支払いを口座引き落とししている場合は、携帯電話会社が口座情報を知っていると考えられます。この携帯電話会社に対して弁護士経由で照会をかければ口座情報が入手できるかもしれません。
弁護士が銀行に照会をかける
もし取引先が使用している金融機関だけでもわかるようであれば、弁護士経由で銀行に照会をかければ支店名も把握できます。
このように、銀行預金差押えをするには、まず債務者が使用している金融機関とその支店名を把握することが重要です。
差押さえのタイミングを考慮する
差押えをいつ行うのか、タイミングを考慮することも非常に重要です。先ほども説明していますが、銀行預金差押えの申立を行い受理されると、裁判所から金融機関に差押命令正本が郵送されます。銀行がこれを受け取ると、その時点での債務者の口座に残っているお金が差押えの対象になります。しかし、もし債務者が銀行が差押命令を受け取る前にお金を他の口座に移してしまうと、差押えができなくなります。また、ちょうど口座にお金がないタイミングに差押えをしても意味がありません。
このように、いつ金融機関に差押命令が届くかを考慮する必要があるのです。では、どのようなタイミングがいいのでしょうか?具体的には以下のようなタイミングが考えられます。
・給料日の前
・入金のタイミング
・賃料を支払う時
給料日が近いタイミングは、給料支払いのために口座に預金が多く残っていると考えられます。そのため、取引先の給料日が分かっていれば、その直前に金融機関に差押命令が届くようにするといいでしょう。
また、取引先にどのタイミングで入金があるのか、が分かっている場合も、そのタイミングで差押命令が届くようにするといいでしょう。例えば、月末に入金が多いのであれば、月初は預金残高が豊富なはずです。
そして、取引先のオフィスや事務所が賃貸の場合、賃料を支払うタイミングは預金が多く残っていると考えられます。
このように、適当なタイミングで差押命令が届くようにするのではなく、意図的にタイミングを調整することで、より成功率も上がるでしょう。
差押えをしたらすぐに取り立てを行う
「差押えをしたから一安心」と考える人もいるかもしれませんが、それは時期尚早です。もし銀行預金を差押えたとしても、取引先が複数の債権者に対して支払いをしていない状態だと、別の債権者が差押えをしてお金を回収してしまう可能性があります。そうなると、いざ自分がお金を支払ってもらおうとしてもすでにお金がない状態になってしまいます。
そのような事態に陥らないためにも、差押えをしたらすぐに取り立てを行うようにしましょう。ちなみに、取り立ては金融機関に差押命令が届いてから1週間で債権者側に支払ってもらうように銀行に請求可能です。債権回収は先手必勝なので、すぐに取り立てを行うことを忘れないでください。
仮差押えを活用する
銀行預金差押えは債務者に対して裁判を起こし、勝訴したうえで初めて行えるものです。しかし、裁判をしている間に、債務者のお金が底を尽きてしまう可能性もゼロではありません。そういったときに利用できるのが仮差押えです。仮差押えは裁判の前のタイミングで行うことができ、仮差押えがされると口座からお金を引き出すことができなくなるので、利用するようにしましょう。
銀行預金差押えが十分にできなかったときの対処法
銀行預金差押えを行い、全ての債権が回収できるのがベストですが、中には全額回収できないケースもあります。そのような場合、他のものを差押えて債権回収することになります。具体的には以下のようなものを差押することができます。
・債務者の給料
・債務者の不動産
・債務者の動産
・債務者の自動車
給料を差押える場合、差押金額の上限は給料の1/4までと決められています。ただし、債権を全額回収できるまで、毎月給料から弁済を受けることが可能です。
また、債務者が家や土地などの不動産を持っているのであれば、それを差押えて債権回収にあてることもできます。
動産とは、土地や家を除いた形のあるものだと考えてください。例えば、骨董品や貴金属、有価証券、現金などが該当します。これらのものも差押えが可能です。ただし、動産であっても、生活必需品や仏壇、実印などの差押えはできません。また、現金を持っていても66万円以下しかない場合は現金の差押えは不可となります。
債務者が自動車を所有していれば、それを差押えることも可能です。ただし、自動車がないと生活できないといった場合は、差押えができません。
このように、銀行預金以外にも差押えができるものはいくつもありますが、中には差押え不可のもの、条件次第で不可になるものも存在します。一つの目安としては、債務者の生活を保障できなくなるものは差押え不可と考えておくといいでしょう。
もう一度銀行預金差押えをするのも1つの方法
銀行預金を差押えして債権回収ができなくても、口座は残っていて入金自体は可能なので、入金されている可能性は十分にあります。そのため、もう一度同じ口座を差押えするのも1つの方法です。
銀行預金差押えのメリット・デメリット
ここからは銀行預金差押えを行うメリットとデメリットについて解説します。
銀行預金差押えのメリット
差押えることの大きなメリットは、債権の確保ができることです。差押えができていないと、債務者は債権者に見つからないようにお金を動かして隠すことができますが、一度差押えをしてしまえば、口座からお金を取り出すことができないため、債権を確保することができます。
債務者からしてみれば、口座が差押えられたという事実だけで大きなプレッシャーがかかると考えられます。口座からお金も動かせないので、資金繰りに苦慮する可能性もあるので、すぐに支払いに応じてくれる可能性も十分にあり得ます。
また、差押えをする前の段階で、「支払いが遅れると差押えをすることになる」と伝えておけば、債務者は差押えを免れようと必死になるので、債権者は有利に交渉を進めることができます。
銀行預金差押えのデメリット
差押えのデメリットは、債権回収が100%行えるわけではなく、場合によっては無駄で終わる可能性がある点です。たとえ差押えができても、口座にお金がなければ意味がありませんし、債務者が破産する可能性もあります。
また、差押えをするには裁判を行う必要があるため、時間も費用もかかり、手続きも面倒です。1人で全ての手続きを行うのは非常に難しいと言えるでしょう。
弁護士に相談しよう
銀行預金差押えを個人で行うのは非常に大変です。また、専門的な知識や経験が必要になる場面も出てくるでしょう。そこで、利用を検討したいのが弁護士です。弁護士は裁判に慣れているので手続きなどをスムーズに進めることができるほか、差押えのタイミングや預金口座の調査方法などにも熟知している可能性が高いです。
また、万が一銀行預金差押えが不発に終わっても、依頼者に適した他の方法を提案してくれるケースもあるので、債権回収が達成できる可能性もアップするでしょう。
取引先の未払いは銀行預金差押えが1つの手段
今回は、銀行預金差押えの概要から具体的な流れ、行う際のポイントなどについて解説しました。銀行預金差押えをしたからといって必ず債権が回収できるわけではありませんが、タイミング次第では大きな効果を上げることも可能です。ぜひ、今回紹介した内容を参考に、債権回収に取り組んでみてください。
⇒債権回収を強力に進めるなら!